おさだ精密工業

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自作、自作、自作、バイク、ときどき家族ネタ

Beta RR2T リアアクスルシャフトをアルミで製作

はじめに

ハード系エンデューロ

かじってる人なら

知らない人は居ない

ロッシさんこと高橋選手。

 

以前レース前の

ロッシさんパドック

ウロウロしてたら

ちょうどリアタイヤを交換してるときで

外したアクスルシャフトを

手渡しながら

「ホレ、持ってみ」と。

 

私も同じ車両に乗ってるので

重さはわかっているので

鉄製シャフトの感覚で持ったら

あまりに軽いのでぶん投げそうになった。

 

お知り合いの職人さんに

アルミで作ってもらったんだそうな。

 

ロッシさんの許可を得て

私もアルミ化したので

涙なしには語れない

製作過程のお話。

 

なぜアルミにしたか

ロッシさんは

トライアル出身のライダー。

トライアル車は車重の

軽さが特徴。

トップレベルの人たちの

物理法則を無視したかのような

動きはあの軽さあってのもの。

 

ロッシさんは

エンデューロマシンにおいても

軽量化を重要視しており

その一環として

アクスルシャフトの材質を変更

したというわけだ。

 

アルミにして大丈夫か?

アルミは鉄と比較して重量が約1/3。

↓が純正の鉄シャフト。390gなので

単純に同形状にすると130g程度になる。

約250gの軽量化になる。

250gは大きい。が、

そうも単純にはいかない。

 

アルミは軽いぶん

剛性が低いため。

まったく同じ形状にした場合

アルミのほうが3倍変形しやすい

 

強度と剛性という話になってくるが

難しい話はGoogle先生にでもまかすとして

要するにちょっと剛性弱くなるので

同じ形ではシャフトが曲がってしまうかも

という話。

 

そのため、

純正の鉄シャフトは中空のパイプ

になっているが、

アルミのほうは中身が詰まった

丸棒にしている。

ロッシさんも同じ形状だが

話を聞いた時点で3シーズン以上

使用しているが問題ないとのこと。

前例があれば安心だ。

 

材質

アルミは混ぜもので

耐腐食性や強度が異なる。

(溶接性なども)

今回のような用途には

できるだけ強度のあるものがいい。

ジュラルミンと言われると

聞いたことあるという方も

多いと思うが、

今回はそれよりも硬い

超々ジュラルミンを使用することにした。

 

アルミ界の中でもダントツに硬いが

そのぶんお値段も高い・・・

というか私のような

一般ピーポーだと

普通は入手も困難。

幸い知人に材料問屋がいるので

私は材料にありつくことができたが、

問屋だけに切り売りとはいかないので

2m単位でしか買えないので

ドキドキするほどの値段だった。

失敗したら「テヘッ」では済まされない。

 

そもそもウチの機械で作れるか

アクスルシャフトともなると

いつも作ってる小物とは

違って長い。

今回は270mmくらい。

ウチのオモチャみたいな

小型の機械だとサイズ的に辛い。

スペック的には心間350mmと

言われているが

心押し台に回転センターを

付けたりなんだりしていると

350mmなんてぜんぜんなくて

せいぜい300mmがいいところみたい。

それでもなんとかギリギリ

ワークをセットできた。

 

結構な切り込み量で

長いから切粉も大量に

発生する。

0.5mm切り込みすると

切粉もかさばって

すぐ詰まってしまう。

が、なんとか加工はできそう。

 

 

長物加工できるか?

こんな長いものを

作るのははじめて。

心押し台のセンターが出ていないと

先細りになったりと

トラブルが起こるので

慎重に調整。

 

で、狙いの径近くまで

加工してみたのが↓

 

加工してみた感じ、

10umも先細ってないようなので

なんとかなりそうなことはわかった。

 

文章で書くと1行だが

はじめての長物で

サイズが旋盤のストロークギリギリ

材料は超高価。

ときたもんだから、

筆舌に尽くしがたいほど

困難な製作だったのだ。

 

最後の難関、ねじ切り

長さに対応できることがわかり

径もそれなりに出せたが

実はそんなものはどうってことなかった

ということに最後に気づかされる。

M20のネジを切らなければならないからだ。

 

旋盤にネジキリ用の刃物をつければ

自由な径とピッチのネジを切ることが

できるが比較的難易度が高い加工であるため

今までやってこなかった。

 

なので試作の1本目はM20のダイスを準備して

気合と腕力で押し切ってやった(笑)

 

ただ、あまりにも厳しかったので

本番の加工ではネジ切りバイトを導入することになったが。

 

無事完成

命からがらネジも切れた。

パッと見はそれなりになった。

が、振れが出てたらオシマイ。

ホイールに通してみるまでは

ドキドキだ。

 

重量的には純正が390gだったのに

対し今回のは240くらい。

↓の写真はエンドプレートを付けていないが

25gくらいのプレートがつく。

ということで約150gの軽量化になっているわけだ。

数字だけ聞くと大したことないと

思われるかもしれないが

持ってみるとこんなに重さが違うのかと驚くほど。

 

緊張の瞬間

ホイールにシャフトが通るかどうか?

 

問題なく通ってホッと一息。

 

 

 

試作品は師匠に

出来たはいいものの

自分が作ったものが

実用に耐えうるか心配だったので

試作品は師匠に人柱してもらった。

 

ホイールの組付けも問題なく

数か月酷使してもらって

どうやら大丈夫そうだという確信が

持てた。

 

量産するはめに

こんな難しい(と私は思ってる)ものが

できたので嬉しさのあまり

Twitterで呟いたら

作って欲しいという人続出(笑)

こんなに作ることになってしまった。

決して作るのが簡単になったわけではないので

これを作るのに1か月くらいかかった・・・


自分のぶんだけアルマイト

作るだけ作って満足してしまって

数か月放置していたのだが、

ジュラルミン系のアルミは

実は耐食性があまりよくない。

アルミのくせに。

銅が入ってるからだとかなんとか。

とは言えずっと水に触れてるわけではないので

使った後にちゃんとメンテすれば

なんともないのだが。

 

ということで、

ちょうどアルマイト案件があったので

自分のぶんだけは

アルマイトかけてやった。

どうせ見えなくなるので

おしゃれ要素はない。


おわりに

アルマイトかけたので

ようやく組み込みかと見せかけて

まだ組んでいない(笑)

 

また組んだら追記する。

 

すでに世に出た兄弟たちで

問題は起こっていないので

強度、耐久性的には

問題ないのだろう。